※本連載は、弊社刊『アプリ翻訳実践入門』の一部をコンパクトに再編集したものです。
キーワード:翻訳、プロセス、調査、テクノロジー
翻訳者に必要な4つ
アプリ翻訳者には、4つの面で知識やスキルが求められます。
A. 翻訳
原文テキストと文脈を基にして、訳文テキストを作り出すスキルです。ここで「文脈」とは、あるテキストが表示される状況を指します。
翻訳と聞くと英語などの外国語能力がすぐに思い浮かびます。しかしたとえば日本語ネイティブが英日翻訳する場合、母語である日本語の表現も重要になります。
さらに、両言語が流暢にできるだけでなく、専門分野で用いられる言語表現も理解しておかなければなりません。たとえばアプリでは「〜してください」という操作指示の表現が頻出します。日本語では「〜してください」でも、英語では「Pleaseなしの命令形」で簡潔に表現することが一般的です。
B. プロセス
翻訳がどのように進められるかに関する知識です。
翻訳と言っても単に訳すだけでなく、開始前に方針を立てたり、翻訳中は調査したり、終わったら自己チェックしたりします。翻訳作業にはプロセスがあるのです。
また、翻訳のビジネスではさまざまな組織や人が関わります。アプリ開発会社、翻訳会社、フリーランス翻訳者などです。このビジネスのレベルでもプロセスが存在します。
つまりアプリ翻訳をするには、実翻訳作業のプロセスに加え、より大きなビジネスのプロセスについて理解しておく必要があります。
C. 調査
翻訳を遂行するのに必要な情報を得るスキルです。
最も分かりやすい調査の例としては、辞書を引くという作業が挙げられます。ただし辞書にはさまざまな種類があり、うまく使い分けると効率化と質向上を図れます。
また、Googleなどの検索エンジンを使って情報や表現を調査したり、正規表現でテキストを効率的に検索または置換したりといったスキルも求められます。
D. テクノロジー
翻訳で用いられるツールやテキスト表示の仕組みに関する知識です。
アプリ翻訳では、翻訳メモリー(Translation Memory:TM)などの翻訳支援ツールが利用されますし、さまざまな形式のファイル(例:XLIFF、PO)が用いられます。
こういったツールやファイル形式の知識に加え、文字コードやプレースホルダーなどテキスト表示に関わるテクノロジーについての理解も欠かせません。
A〜Dを表Aにまとめます。
カテゴリー | 説明 |
---|---|
翻訳 | 原文テキストと文脈を基にして、訳文テキストを作り出すスキル |
プロセス | 翻訳がどのように進められるかに関する知識 |
調査 | 翻訳を遂行するのに必要な情報を得られるスキル |
テクノロジー | 翻訳で用いられるツールやテキスト表示の仕組みに関する知識 |
表A(『アプリ翻訳実践入門』p. 24より一部転載)
まとめ
- アプリ翻訳では、「翻訳」、「プロセス」、「調査」、「テクノロジー」という4つの面で知識やスキルが求められます。
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