【第13回】翻訳の基本テクニック:無生物主語

※本連載は、弊社刊『アプリ翻訳実践入門』の一部をコンパクトに再編集したものです。

 

キーワード:無生物主語

英日翻訳での無生物主語

英語では無生物主語が用いられますが、日本語訳時にそのまま無生物主語を使うと、違和感を抱かせる訳文になることあります。

英日翻訳時に英語原文で無生物主語が用いられていたら、以下のようにするとうまく日本語訳が作れることがあります。

条件を示す形にする

無生物主語の代わりに「〜すると」、「〜を使うと」、「〜の場合」など、条件を示す表現を使う方法です。

以下、訳例1では無生物主語のままで訳し、訳例2では紹介するテクニックを使って翻訳しています。

【原文】Calling this function leads to memory shortage.

【訳例1】この関数を呼ぶことはメモリー不足を発生させます。

【訳例2】この関数を呼んだ場合、メモリー不足が発生します。

話題や場所を示す形にする

続いて、無生物主語の部分を「話題」や「場所」を示す形にする方法です。「〜では」、「〜で」、「〜には」、「〜に」、「〜については」といった表現を用います。

【原文】The browser list includes Firefox, Chrome, IE, and Safari.

【訳例1】ブラウザーのリストは、Firefox、Chrome、IE、およびSafariを含んでいます。

【訳例2】ブラウザーのリストには、Firefox、Chrome、IE、およびSafariが含まれています。

受身の形にする

最後に、文を「受身」の形に変換する方法です。具体的には「〜により(よって)、…される」という表現です。

【原文】This change requires you to restart the app.

【訳例1】この変更はアプリの再起動を要求します。

【訳例2】この変更により、アプリの再起動が要求されます

 

英語の無生物主語は、日本語訳が不自然になってしまう代表的な場面です。上記で紹介した方法を活かしながら、工夫して日本語訳を作りましょう。

まとめ

  • 英語の「無生物主語」は、条件、話題や場所、受身など、いくつかの方法で日本語に訳せます。

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