【第18回】アプリ翻訳のポイント:アプリ独特の言語表現(3)youとyour

※本連載は、弊社刊『アプリ翻訳実践入門』の一部をコンパクトに再編集したものです。

キーワード:you、your

どの分野にも特徴的に用いられる言語表現があります。何回かに分けてアプリ独特の言語表現を紹介します。

頻出するyouとyour

英語のアプリでは「you」や「your」という言葉が非常に頻繁に出てきます。アプリを操作している人(you)やその人の所有物(your)を指し示すときに使われる言葉だからです。

英日翻訳でyouとyourをどう訳すか、いくつか例を見てみます。

you

英語原文に「you」がある場合、日本語で「訳出しない」という選択肢がまずあります。

【原文】You can change this setting later.
【訳例】この設定はあとで変更できます。

一般的なユーザーを指しているときは、「ユーザー」という言葉でも訳出できます。

【原文】You can choose how the photo is displayed.
【訳例】ユーザーは写真の表示方法を選択できます。

「you」の直接的な訳語である「あなた」も使えます。ただし日本語だといかにも翻訳調という印象を与えるため、適切な場合以外は避けたほうがよいでしょう。

【原文】This file is locked because you are editing it now.
【訳例】あなたが編集中のため、このファイルはロックされています。

your

所有物を指すときに使うyourも、まずは「訳出しない」という方法が挙げられます。

【原文】Backup your files
【訳例】ファイルをバックアップ

やはり同様に「ユーザーの」や「あなたの」も可能です。

【原文】This option requires your permission.
【訳例】このオプションではユーザーの許可が必要です。

さらに、「お使いの」、「ご利用の」、「ご購入の」、「お住まいの」、「自分の」、「この」といった言葉が適切な場面もあります。

【原文】Your account has been disabled.
【訳例】お使いのアカウントが無効になりました。

このように、youやyourは多様な和訳が可能です。「あなた」や「あなたの」で問題ない場面もありますが、訳出しなかったり、「ご購入の」や「お住まいの」を使ったりしたほうが適切な場面もあります。

日本語に翻訳する際は、youやyourが示す内容を考えて訳語を選ぶようにしてください。

まとめ

  • 英語のアプリでは「you」や「your」という言葉が頻出する。
  • youとyourは「訳出しない」、「ユーザー(の)」、「あなた(の)」など、内容を考えて和訳をする。

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