【第3回】可能(3)と旅立

ITエンジニアが芭蕉と学ぶ英語構文

著者:西野 竜太郎(@nishinos

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登場人物

芭蕉

江戸時代の俳諧師。「おくのほそ道」の旅で、東北と北陸を巡って俳句を詠む。

曽良

芭蕉の弟子。「おくのほそ道」で芭蕉に随行する。

ワタシ

21世紀の英語翻訳者。「おくのほそ道」で芭蕉に同行してIT英語を教える。

これまでのあらすじ

21世紀への時間旅行を企てる松尾芭蕉は、まさに21世紀的な職業であるプログラマーとして旅行中の費用を工面しようとする。しかし「プログラマー35歳定年説」を知ると、すでに四十路半ばだった芭蕉は断念し、代わりに年齢に関係ない英語スキルを「おくのほそ道」の道中で学ぶことにする。

芭蕉は出発前に住居を他人に譲り、その柱に「草の戸も 住替る代ぞ ひなの家」という一句を書いて掛けておいた。

可能(3)と旅立

5月中旬、滞在していた杉山杉風の採荼庵を出発し、見送りの人たちと一緒に舟に乗って隅田川を遡り、日光街道の最初の宿場である千住(東京都足立区)に向かっている。

ワタシ

♪春のうららの〜隅田川〜。

何ですか、その歌は?

ワタシ

いまから200年後くらいに生まれる歌で、とても有名なんですよ。

まだ存在していない歌なら、今のうちにパクって自分が作ったことにしたらどうじゃ? ガハハ。

ワタシ

(冗談、だよな……)

えー、さて、舟の上ですが、英語の勉強を始めましょう。

今回も「可能」の意味がある無生物主語の構文で、makeという動詞を使います。

これも基本的な動詞の構文ですね。

ワタシ

はい、まずはサンプル英文を見てみましょう。

The new feature will make it possible to share news.

新しい機能を使うと、ニュースを共有することが可能になります。

This editor makes it easier for developers to build UIs.

このエディターを使うと、開発者はUIを構築することがさらに簡単になります。

makeの後に「it」があるところが特徴でしょうか……。

ワタシ

はい、これは文法用語で「形式目的語」と呼ばれます。仮に置かれた目的語ですね。実質的な目的語は、1文目の場合「to share news」、2文目の場合「to build UIs」と後ろに出てきます。

では、今回の構文を一般的な形式にしてみましょう。丸かっこ内の要素は省略できます。

<今回の構文>

[無生物主語] make it [形容詞] (for [人]) to [動詞].

[無生物主語] を使うと、([人] は)[動詞] することが [形容詞] になります。

[形容詞] の部分には、possible、easyといった形容詞、さらにeasierのように比較級を置くこともできます。

ちなみに、今回は「可能」の意味の構文なのでpossibleやeasyといった形容詞を例にしていますが、impossible、difficult、harderと逆の意味の形容詞を使っても文は書けますよ。

なかなか複雑そうな構文じゃが、パラメーターが多いので、うまく使うと多様な表現ができそうじゃな。

では、試しにその構文で作文してみよう。

The eyeglasses make it possible for children to see virtual pets.

メガネを使うと、子どもたちは電脳ペットを見られるようになる。

これでよろしいか?

ワタシ

はい、結構です。

(どういう意味……?)

◆  ◆  ◆

舟に乗って隅田川を遡り、芭蕉は千住で下船する。この先の長い旅と、見送りに来た人たちとの別れを想い、一句詠んだ。

行く春や 鳥うおの 目は涙

(春が過ぎ去ろうとしている。別れに鳥は悲しく鳴き、魚の目には涙が浮かんでいる)

ここからは歩いて北に向かう。

…… 次回に続く

今回の地図

出発前に滞在していた採荼庵と、句を詠んだとされる千住大橋(矢立初めの地)。