【第3回】翻訳ステップの流れ

※本連載は、弊社刊『アプリ翻訳実践入門』の一部をコンパクトに再編集したものです。

 

キーワード:抽出/翻訳/統合、文脈資料、翻訳方針、訳出、自己チェック、コメント、納品

ローカリゼーションの3ステップ

ローカリゼーションには、(1)抽出、(2)翻訳、(3)統合という3ステップがあるとされます*1

まず「抽出」ステップでは、翻訳対象となるテキストや画像などをアプリから取り出します。次の「翻訳」ステップで実際の翻訳作業をします。最後の「統合」ステップで、翻訳されたテキストや画像をアプリに組み込みます。

抽出と統合ではプログラマーが関与しますが、翻訳者が関わるのは翻訳ステップです。そのためここを詳しく見てみます。

翻訳ステップの流れ

典型的には、翻訳ステップは図Aのような流れになります。

図A(『アプリ翻訳実践入門』p. 27より転載)

(1)ファイルや資料の入手

翻訳を依頼されるとき、翻訳対象ファイル、参考資料、プロジェクト情報など、さまざまなファイルや資料を受け取ります。

たとえば翻訳対象ファイルの形式には、PO、PROPERTIES、XLIFFなどがあります。また参考資料として代表的なのは、用語集とスタイルガイドです。

また、アプリのUIを翻訳するとき、言葉が使われる文脈をはっきりさせるための資料は欠かせません。たとえば、アプリそのものや画面スクリーンショットです。

(2)翻訳方針と手順の決定

ファイルや資料を入手したら、どのような方針と手順で翻訳を進めるのかを決めます。

たとえば10代が対象のスマホ・ゲームのヘルプを英日翻訳する場合、難しい漢字は避けたり、カジュアルな表現を採用したりといった方針が立てられます。

(3)翻訳の実作業

続いて翻訳の実作業に入ります。メインの作業は「訳出」(訳文を作ること)になります。

訳出に加え、「調査」、「翻訳支援ツールの利用」、「コメントの作成」といった仕事もします。

(4)自己チェック

翻訳が終わったらすぐ納品するのではなく、見直したをしたほうがよいでしょう。

見直すべきポイントしては、たとえば未翻訳、訳抜け、誤訳、用語、スタイルなどがあります。

(5)完了通知/納品

自己チェックが終わったら翻訳依頼者に完了を知らせたり、納品したりします。翻訳作業中にコメントがあったら忘れずに送付します。

まとめ

  • ローカリゼーションには「抽出」、「翻訳」、「統合」という3 ステップがあり、翻訳者が関わるのは「翻訳」ステップです。
  • その翻訳ステップには(1)ファイルや資料の入手、(2)翻訳方針と手順の決定、(3)翻訳の実作業、(4)自己チェック、(5)完了通知/納品、という典型的な流れがあります。

1:Roturier, J. (2015). Localizing Apps: A practical guide for translators and translation students. Routledge.

 


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