【第5回】翻訳の品質評価

※本連載は、弊社刊『アプリ翻訳実践入門』の一部をコンパクトに再編集したものです。

 

キーワード:エラー評価、エラー・カテゴリー、MQM、LISA QA Model、JTF翻訳品質評価ガイドライン

頻繁に用いられるエラー評価

翻訳を評価する方法はいくつもあります。たとえば専門家やユーザーが訳文を主観的に評価したり、かかったコストと比較して評価したり、あらかじめ作った仕様をどの程度満たしているかで評価したりする方法です。

その中でも実際に欧米でよく用いられているのが「エラー評価」です。できるだけ客観的な評価を目指しています。

具体的な方式としては、LISA QA Model、SAE J2450、MQMなどがあります。国内でも、日本翻訳連盟(JTF)が2018年に「JTF翻訳品質評価ガイドライン」を提示しています。

エラー評価の方法

エラー評価とは、訳文中にどういったカテゴリーのエラーがいくつあるのかカウントして評価する方法です。減点方式の評価と言えます。

、各エラーは重大度に応じて点数を付けるのが一般的です。たとえば「深刻」エラーなら100点、「重度」エラーなら10点、「軽度」エラーなら1点といった具合です。つまりエラーが重大であればあるほど点数は高くなります。

エラーの合計点数があらかじめ決めたしきい値を超えると「不合格」といった判断を下します。

エラー・カテゴリー

エラーはカテゴリー別にカウントします。例として、MQMの大分類を表Aに示します。正確さ、流暢さ、用語、スタイルといった項目が入っています。

なお、JTF翻訳品質評価ガイドラインも基本的にMQMと同じカテゴリーを用いています。翻訳ビジネスは国際的であるため、互換性を持たせてあるのです。

カテゴリー 説明
正確さ(Accuracy) 訳文が原文の内容を反映していない。「誤訳」や「抜け」などが含まれる
流暢さ(Fluency) 訳文テキストが形式として整っていない。「スペルミス」 や「文法ミス」などが含まれる
用語(Terminology) 専門分野の用語や指定の用語が用いられていない
スタイル(Style) 指定のスタイルが用いられていない
デザイン(Design) 言語面ではなくデザイン面で問題がある。訳文が切れていて表示されていない場合など
ロケール慣習(Locale convention) 訳文のロケールの慣習に違反している。「日付形式」や「度量衡形式」などが含まれる
事実性(Verity) 訳文の内容が事実と異なる。「発売中」と書かれているのに、日本ではまだ買えない、など

表A(『アプリ翻訳実践入門』p. 47より転載)

まとめ

  • 翻訳の品質評価方法としては「エラー評価」が欧米で用いられています。たとえばLISA QA ModelやMQMです。
  • 日本でも「JTF翻訳品質評価ガイドライン」が2018年に作られました。
  • エラー評価は、「エラー・カテゴリー」と「重大度」で点数を付け、合計点数から合否を判断します。

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