【第2回】可能(2)と草庵

ITエンジニアが芭蕉と学ぶ英語構文

著者:西野 竜太郎(@nishinos

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登場人物

芭蕉

江戸時代の俳諧師。「おくのほそ道」の旅で、東北と北陸を巡って俳句を詠む。

曽良

芭蕉の弟子。「おくのほそ道」で芭蕉に随行する。

ワタシ

21世紀の英語翻訳者。「おくのほそ道」で芭蕉に同行してIT英語を教える。

これまでのあらすじ

21世紀への時間旅行を企てる松尾芭蕉は、まさに21世紀的な職業であるプログラマーとして旅行中の費用を工面しようとする。しかし「プログラマー35歳定年説」を知ると、すでに四十路半ばだった芭蕉は断念し、代わりに年齢に関係ない英語スキルを学ぶことにする。

ワタシは「おくのほそ道」の旅に同行させてもらうことを条件に、道中で芭蕉らにIT英語を教えることとなった。

可能(2)と草庵

「おくのほそ道」への旅立ちに向けて芭蕉は住居を他人に譲り、現在、門人である杉山杉風宅に滞在している。

ワタシ

いよいよ明日「おくのほそ道」に出発ですね。

そんな状況ですが、英語構文をもう一句、いや一つ、学んでおきましょう。

なかなかのスパルタじゃのう。

ワタシ

旅行中のほうが疲れてやる気が出ないかもしれませんからね……。

前回と同じく、「可能」の意味を表す無生物主語の英語構文です。

第2回となる今回は「help」と「let」を紹介します。

助動詞canを使った文ばかりだと面白みに欠けますからね。

ワタシ

さっそくサンプル文を見てみましょう。

This wizard helps you organize your photos.

このウィザードを使うと、写真を整理できます。

Pressing this button lets users download files.

このボタンを押すと、ユーザーはファイルをダウンロードできます。

2つめの文は「Pressing this button」(ボタンを押すこと)という操作が無生物主語になっています。三人称単数なので、動詞には「s」を付いて「lets」です。

英和辞書を見ると、helpは「助ける」、letは「許す」という訳が最初に出てくるが、「〜できる」という表現でも使えるんじゃのう。

ワタシ

はい、IT関連のドキュメントではよく出てきます。

ところで、前回のallowとenableとよく似ています。どう違うんでしょうか?

ワタシ

文の作り方が若干違います。allowとenableは「to」が入りますが、helpとletは不要です。

つまり、今回の構文はこうなります。

<今回の構文>

[無生物主語] help/let [人/物] [動詞].

[無生物主語] を使うと、[人/物] は [動詞] できます。

[動詞] は原形になる点に注意してください。

ただしhelpは、help [人/物] to [動詞]、とtoを入れる形でもOKです。

では、試しにその構文で作文してみよう。

This crystal helps a castle fly in the sky.

この結晶を使うと、城は空を飛べます。

これでよろしいか?

ワタシ

はい、結構です。

(どういう意味……?)

◆  ◆  ◆

ところで芭蕉は江戸から「おくのほそ道」に出立する前に、住んでいた自宅の草庵を手放した。江戸時代の道中は危険も多く、戻ってこれない可能性もあったからだ。

芭蕉は一句詠み、それを草庵の柱に掛けておいた。芭蕉が引っ越した後、ここには子連れ家族が住む予定らしい。

草の戸も 住替る代ぞ ひなの家

(この草庵の住民も代わるときが来た。子どもが住むなら雛人形が飾られるのだろう)

いよいよ出発のときが来る。

…… 次回に続く

今回の地図

芭蕉庵から、出発直前に滞在していた杉山杉風の採荼庵へ。