【第12回】翻訳の基本テクニック:品詞転換

※本連載は、弊社刊『アプリ翻訳実践入門』の一部をコンパクトに再編集したものです。

 

キーワード:品詞転換

違う品詞で訳す「品詞転換」

翻訳する際、品詞を同一に保つ必要はありません。語によっては同じ品詞のまま翻訳しようとすると、うまく訳せないこともあります。そういったケースでは品詞を別のものに変えるという「品詞転換」というテクニックが使えます。たとえば原文では形容詞であった単語を、翻訳する際に動詞にするということです。

例をいくつか見てみましょう。あくまで例であり、実際はさまざまな品詞間で転換が可能です。

名詞→動詞

まずは名詞を動詞に転換する例です。訳例1は原文と同じ品詞で翻訳、訳例2は品詞を転換して翻訳しています。

【原文】Use of this feature allows you to download files smoothly.

【訳例1】この機能の使用により、ファイルをスムーズにダウンロードできます。

【訳例2】この機能を使うと、ファイルをスムーズにダウンロードできます。

動詞→名詞

逆に、動詞を名詞に転換する例です。同じく訳例1で原文と同じ品詞を使い、訳例2で品詞転換をしています。

【原文】This operation causes malfunction.

【訳例1】この操作が不具合を引き起こします

【訳例2】この操作が不具合の原因になります。

副詞→形容詞

次に副詞から形容詞への転換です。

【原文】In this case, an upload error often occurs.

【訳例1】この場合、アップロード・エラーがしばしば起こります。

【訳例2】この場合、アップロード・エラーが起こることは珍しくありません

接続詞→名詞

最後に、接続詞を名詞に転換する例を紹介します。

【原文】Checking for software updates failed because you are not connected to the Internet.

【訳例1】インターネットに接続していないので、ソフトウェア・アップデートの確認に失敗しました。

【訳例2】ソフトウェア・アップデートの確認に失敗しました。インターネットに接続していないのが原因です。

 

日本語に翻訳したときに「どうもしっくりこないな……」と感じたら、原文とは別の品詞で翻訳できないか検討してみましょう。翻訳時に原文と同じ品詞を使わなければならないという決まりはありません。品詞転換は、翻訳者の創造性を発揮できる場面です。

まとめ

  • 「品詞転換」は、原文とは違う品詞を訳文で使う方法です。
  • さまざまな品詞間で転換が可能です。

本記事の元になっている書籍『アプリ翻訳実践入門』の詳細および購入についてはこちらのページをご覧ください。