【第17回】アプリ翻訳のポイント:アプリ独特の言語表現(2)省略

※本連載は、弊社刊『アプリ翻訳実践入門』の一部をコンパクトに再編集したものです。

キーワード:省略

どの分野にも特徴的に用いられる言語表現があります。何回かに分けてアプリ独特の言語表現を紹介します。

省略して短くする

英語では文の要素を「省略」することがあります。特にアプリでは、テキストを省略して短くする例が頻繁に見られます。これは表示スペースが限られているという点が理由だと考えられます。

英語では以下のような要素が省略されます。いくつか英日翻訳のサンプルを見てみましょう。

主語

主語が省略されます。これを和訳する際も主語を省くことになりますが、日本語では主語の省略は珍しくないため、違和感は少ないでしょう。

【原文】Can’t access SD card.(出典:Android)
  → The app などが省略
【訳例】SDカードにアクセスできません。

動詞

助動詞も含め、動詞が省略されます。isやareなどbe動詞が省略されるケースが目立ちます。

【原文】No apps found.(出典:Windows Phone 7.5)
  → are やhave been が省略
【訳例】アプリが見つかりません。

主語と動詞

上記の主語と動詞がまとめて省略される例です。

【原文】Use it anyway?(出典:Microsoft Excel 2007)
  → Do you などが省略
【訳例】 使用を続けますか?

ほかにも、出現例はあまり多くありませんが、目的語も省略されることがあります。

このように英語では文中のさまざまな要素が省略されます。日本語に翻訳するときは「短くしたい」という原文筆者の意図を汲み、可能な限り短いテキストに翻訳するようにしましょう。

まとめ

  • アプリではテキストを省略する例が見られる。表示スペースが限られている点が理由だと考えられる。
  • 省略される要素としては、たとえば主語、動詞、主語と動詞、目的語がある。

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